なぜ「松戸市病院事業会計補正予算(第2回)」に賛成してはいけないのか?

2014.12.29

定例会最終日、今年度二度目となる病院事業会計の補正予算案に対して、反対討論を行いました。

平成26年度、すでに18億3千9百35万7千円もの繰入金が発生しているにも関わらず、この12月になって、突然9億円もの赤字補てん金を補正するという今回の議案。
先般の市立病院建設検討特別委員会にて、病院管理局長は「病床利用率について当初見込んだ81.9%に届かず、9億円の赤字繰り入れを補正予算するしかなくなった」と説明。
その理由は…「前年度7対1看護の取得に向けて病床管理による抑制を促してきたから」という、耳を疑うような内容でした。
なぜならば、これまで何年にも亘り、経営改革プランおよびその後の病院経営健全化プロジェクトにおいても、「7対1看護基準の実現」は松戸市立病院事業の収支改善のよりどころであったからです。(本年4月に公表された『松戸市病院事業経営計画・第一次(平成26~28年度)』にも記されています。

さらに9億円の追加補正の内訳は、入院収入8億円の減少に対し、外来収入2億5千万円の増加、差し引き5億5千万円の減少で、それに9億円補てんしろという議案です。
つまり9億円補正することにより、減少分の補てん額5億5千万円との差額、3億5千万円が余ります。その3億5千万円は、抗がん剤の購入等、「材料費に使う予定」とのこと。
公営企業会計において、このようないい加減な話があるでしょうか??

そればかりか、病床利用率向上について、「職員全体の意識を変えることができず、病床利用率が低迷している」と責任を職員に押し付け、『病院長宣言』なるものによる重点的な取り組みの結果、「10月下旬より利用率は確保できている」と、とって付けたような説明が行なわれました。しかし、その向上した利用率というのは、全570床ではなく、一般病床385床に対する利用率でした。

病院経営においては、約2年間のスパンにより、国の施策から医療点数が改正され、収益予想を行なうことができます。民間病院は、その収益の範囲内で補てんなしに経営を行なっているのです。なぜ初めから取り組まずに、この10月下旬、つまり定例会の1ヶ月前から“帳尻を合わせるかのような”姑息な答弁をするのでしょう?

私は「民間病院と同じレベルで経営しろ」と、言っているのではありません。
単に、これまで約束された国保松戸市立病院における経営改善の、法律で定められた説明責任を求めているだけなのです。

私は委員会にて、赤字補てん分ではない3億5千万円がもし認められなかった場合、病院がどうなるか?潰れてしまうのか?と質問しました。
それに対し、「う〜ん、潰れはしませんが2月くらいに薬剤の購入が困難になることが予想されます…」という、なんとも苦しい答弁が行なわれました。

私は、14年間のサラリーマン生活を経て、破綻状態の会社を引き継ぐ形で独立起業し、再生を果たしました。その経験を「この松戸市を通して社会へ還元したい」と、願っております。

公営企業会計において、たとえそれが公立病院であっても、地方財政法施行令 第46条に定められている事業の経理は、特別会計を設けてこれを行ない、当該公営企業の経営に伴なう収入をもってその経費にあてるという「独立採算が原則」であることは言うまでもありません。

ただし、地方財政法第6条において、一般会計からの繰入れによる収入をもってあてることができるのは次の三つの経費のみです。

・その性質上、当該公営企業の経営に伴なう収入をもってあてることが適当でない経費
・当該公営企業の性質上、能率的な経営を行なっても、尚、その経営に伴う収入のみをもってあてることが客観的に困難であると認められる経費
・災害その他、特別の事由がある場合において議会の議決をたとき

使途の明確でない材料費は、「当該公営企業の経営に伴なう収入をもってあてることが適当でない経費」と言えるでしょうか?はなはだ疑問であります。これは過去、松戸市立病院改革プラン報告書でも課題として度々指摘されてきたことであり、
本議案により、改善されていないことが明確となりました。

また、過去4年間、本議会において私が何度も指摘して参りました通り、松戸市立病院が「能率的な経営を行なった」事実はありません。それは、今回の補正予算を見ても明らかです。

公立、民間問わず、病院経営に求められるのは、できる限り正確な需要予測に基づいて、事業計画、予算編成を行なうことです。前年度と同じことを繰り返していては、小児や周産期など、政策医療の崇高な目的を維持することは不可能です。それが最低限、松戸市立病院の経営者に求められる資質です。

年度の途中に8億円もの収入減を生じさせたあげく、それ以外に3億5千万円もの材料費が掛かるという、病院経営の根幹に関わるような補てんが、もし本当に必要ならば、なぜその使途について明確な説明を行なうことができないのでしょう?

先ほど、「とって付けたような」と指摘した10月下旬からの病床利用率についても、
7対1看護基準の算定要件が厳しくなり、本年4月から半年間の猶予期間が終わって、この10月から加算額がカットされることが、本当の理由ではありませんか?

12月定例会中に不承不承(ふしょうぶしょう)再開された市立病院建設検討特別委員会は、わずか2時間ばかり。適切な審査過程も行なわれずに、この杜撰で不透明な補正予算が通過されようとしています。

”各会派に話しをつけて、議案さえ通してしまえば、反対討論で何を言われようと関係ない”
もし病院関係者の皆さんがそう思っておられるのであれば、これほど市民を愚弄することはありません。

もうひとつ、この補正予算が含有する松戸市立病院事業の、深刻且つ重要な問題について申し上げます。
ご承知の通り、現在、この国保松戸市立病院の移転建て替え計画が進行しております。
この度の最大の問題のひとつは、補正予算を通して、市立病院の現実的な適正病床数が、はからずも露呈したことです。

現在570床でありながら、病床稼働率が過去3年間で約10%も下落しているにも関わらず、
今、正に600床もの新病院建設が強行されようとしていることと、長年に亘り、松戸市病院事業の収益改善のカギと目されながら、7対1看護の不調。病院経営を取り巻く環境変化を考えるに、これほどの矛盾はあるでしょうか?

平成25年度6月定例会にて、私は数々のデータから、新病院の適切病床数は、本郷谷市長がマニフェストで公約された450床以下、平均在床数の80%から90%である「約370床から420床」だと申し上げた上で、何よりも病院経営の目的と健全化のため、公約を遵守されるよう迫りました。この度の補正予算における病院管理局長による説明は、正にそれを裏付けるものでありました。

周辺病院との機能分化はすでに始まっています。
厚労省「平成20年患者調査」及び、国立社会保障・人口問題研究所による「日本の都道府県別将来推計人口」を基に推計されたデータから、疫病毎に将来の患者数を推計すると、入院患者においては、すべてが平成42年まで増加し、以降減少するとされています。

今の計画のままでは、開院が遅れることは逃れないと推察されますが、もし仮に本郷谷市長の政治的思惑通り、平成29年に開院できたとしても、わずか13年で患者数はピークを迎えてしまうのです。

私は、これまで再三に亘り、松戸市病院事業の問題点について指摘して参りました。
平成25年度3月定例会一般質問では、「マネジメント側人材の一新、公設民営化など、
抜本的な経営改革なくして、松戸市に限らず、自治体立病院の持続的な運営は成り立たない」と、申し上げました。
その度に「経営改善に努める」等の答弁が繰り返された挙句、何も改善されなかった結果が、この度の補正予算です。

定例会最終日の議案採決に際して、私が反対討論を行うたび、
「また大橋は反対か」或は「議会をスムーズに進行させることが分かっていない」などと、よく批判されます。
果たしてそうでしょうか?
反対したら「松戸市立病院の運営に支障をきたす」のではなく、ずるずると賛成することが、「松戸市立病院の経営に危機をもたらす」のです。

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